フィールド調査 : 海外

ニューヨーク市合流式下水道地区でのディスポーザー使用影響調査レポート

ニューヨーク市議会建築物委員会公聴会実施団体:ニューヨーク市環境保全部
調査時期:1997年

概要

 ニューヨーク市では下水道が合流式で老朽化しているという理由から他の地区とは別にディスポーザーの使用を禁止する法律が存在した。しかしあくまでも予想の範囲内であり法律としての科学的根拠が無いため世界でも古い部類に入るニューヨーク市合流式下水道へのディスポーザー使用時の影響を調査。

※合流式とは汚水と雨水を同じ管渠で排除する下水道。分流式は汚水と雨水を別々の管渠で排除する。
※ディスポーザーが数々の社会実験を経て安全が確認されたことにより全米でディスポーザーの普及が加速しはじめた1970年以降、ニューヨーク市では合流式下水道地域での使用を禁止を法制化

  • ニューヨーク市の人口7,782,000
  • 14箇所の下水処理施設
  • 合流式下水道がニューヨークの75%を占める
  • 1970年代以降、1995年9月、市法74によりニューヨーク市環境保全部(DEP)による21ヶ月に及ぶ合流式下水道地域でのディスポーザー使用のケーススタディを認める
研究の目的
  • 脂や生ゴミの下水管に対する影響調査
  • 水の消費量の影響調査
  • 下水処理施設における栄養素調査
  • 固形廃棄物(SS)、生物化学的酸素要求量(BOD)の増加した水を受け入れることへの影響調査
  • すべての規制を承諾できる市の能力への影響調査
  • 固形廃棄物処理への影響調査
  • その他の環境への影響と水道及び下水設備の操業コストへの影響調査

 3つの地区を選定/それぞれ研究対象グループと比較対象グループを結成

  • クイーン区
    • 79の集合住宅(アパートメント)のうち、34がディスポーザーを設置。211人が研究対象グループ
    • 49の集合住宅129人が比較対象グループ
  • ブルックリン区
    • 392の高層集合住宅で121のディスポーザーを設置/695人が研究対象グループ
    • 420高層住宅、781人が比較対象グループ
  • マンハッタン区
    • 102の低層住宅で88のディスポーザーを設置、134人が研究対象グループ
    • 20の低層集合住宅、66人が比較対象グループ
  • 全てのグループから排出される生活排水のサンプルをとり、TSS、BOD、CODの比較をした
  • 研究対象地域の下水管内の様子をビデオ撮影

 注:ブルックリン区でのサンプル結果はサンプル採集での問題により無効

影響
  • 水質モデルの予測によるとBOD数値の増加が2005年までにニューヨーク港の酸素含有量(DO)を1?あたり0.01mg減少させる結果となる
  • 支流の水質分析では通常4.0mg/l以下の酸素含有量(DO)が入り江の周辺かたは内部での標準値より約1.5%増加する
  • 2035年までにディスポーザーの普及率が38%になると固形廃棄物処理にかかるコストは現行の処理コストでいうと年間4億ドルの削減が予想される
総括
  • ディスポーザーは極めて小さな影響しか及ぼさない
  • ニューヨーク市環境保全部(DEP)が合流式下水道地域に対してのディスポーザーの禁止の取り消しを勧告
  • 1997年10月11日、禁止規制は科学的根拠の基に市法から取り消された
総括

 長い間、ニューヨーク市の下水道は合流式で老朽化しているとの理由から合流式の地域ではディスポーザの禁止をしていた。

 当時のジュリアーニ市長が周囲の自治体にあわせるべきだという意向をしるし、中立の対場から検証し根拠のある判断をしたいと調査を開始。

 表向きの理由とは別に実際は特定の組織・団体・職員・議員がゴミの運搬収集に関する利権に大きく関わっていたことから反社会勢力のディスポーザ普及による運搬収集業務の既得権益減損を懸念、ディスポーザ使用の抵抗勢力を形成し長期間、普及を阻害していたと言われてます。その不正を浄化する為には禁止の根拠を科学的に排除する必要があった。

 その為に合流式で老朽化している下水管にディスポーザがどのように影響するか大規模実験を行い、調査の結果、合流式下水管に対し安全性が確認され、使用反対の根拠を失いディスポーザ禁止規制は取り消されました。

 また合流式エリアでのディスポーザ解禁後、ニューヨーク周辺の海域の水質が年々徐々に改善されたこともニューヨーク市より公式に発表されてます。

 これは下水道には雨水の他に工場廃水や生活雑排水、つまり屎尿などの排泄物が放流されています。 人体からの排泄物の成分には窒素、りんが多く含まれており、ここに炭素が比較的に多く含まれているディスポーザー排水が加わるとBODも増加しますが活性汚泥法で用いられている細菌類、原生動物である微生物にとって理想的な活動環境に近づく為に下水処理施設の処理効率が上がったものと思われます。

 日本エスコでは環境を考慮すれば家電製品のように点での普及ではなく行政管理型による地域の全世帯が一括設置することが環境面、利便性、財政面でも最もディスポーザーの恩恵を享受できると考えています。