フィールド調査 : 海外

アメリカの排水処理の実情

1966年3 月24日 ニューヨーク市議会建築物委員会公聴会
ゼネラルエレクトリック社(GE)水道処理研究所 K.S.Watson氏による陳述書(抜粋)

 アメリカ国内の生ゴミの処理問題が難しくなってきている現在、ディスポーザーは生ゴミを処理するもっとも便利な方法として、住宅メーカーのあいだで広い支持が得られているし、多くの公衆衛生当局の人たちもディスポーザーが生ゴミをもっとも衛生的に処理する代表的な方法であるという立場をとっています。

 デトロイト市で最初にディスポーザーの設置が義務づけられたのは1951年のことです。3 カ所特定のエリア(住宅地および食品を扱う建物)でディスポーザーの設置を要請し、そこが100 %ディスポーザー使用の共同体となりました。それ以来、デトロイト市だけでなく各地の都市でディスポーザーの使用が法令化されはじめ、ディスポーザー使用が急激に増えたため、下水処理施設に対する影響に関する問い合わせが激増しました。そこで私たちはディスポーザーの使用と下水処理施設との間の技術的なデータを明らかにする必要性を痛感しています。

 私たちGE社の水道処理研究所が各地の自治体、共同体といっしょに行なった調査とその結果の大部分は専門雑誌で公表されています。このデータの転載、利用は自由です。

水の使用とそのコストについて

 ディスポーザーの設置で最初に聞かれる質問は、どれだけの水量を消費するかです。私たちの研究所はルイスビル(ケンタッキー州)にある家庭に委託し、徹底した調査を行なった結果、ディスポーザー自体の1日の使用時間は2.18分でした。さらに水道の蛇口からディスポーザーへの水の流れを3種類に分けて使われた水の量を測定しました。これによりますと、ディスポーザーを使用する場合は蛇口の流量が重要な意味をもち、排水管を流す水の容量を大きくすることが大切であることがわかりました。ディスポーザーを使用するときの水の量は、ルイスビルの場合1日にディスポーザー1個当たり23.8リットルから35.2リットル。ディスポーザー1個を稼働するのに必要な水のコストは1年間で0.69ドル~1.02ドルであり、電気代は0.25ドルでした。

排水調査

 ディスポーザーによる下水処理施設への負荷の本質を見極めるために、ディスポーザーを大量に設置したいくつかの共同体を調べました。

 アメリカでは多くの都市でディスポーザーの大量設置の方法をとっています。もし、ディスポーザーによる負荷が下水システムや処理工場に重大な問題を引き起こすのであれば、都市全体の下水システムに関する詳細な調査が必要となります。デトロイト市とロサンゼルス市はそうした調査を大規模に行なった都市です。この2つの都市に関する調査結果はほぼ同じでした。結果は、毎年大量のディスポーザーが新しく設置されたにもかかわらず、下水中の浮遊固形物、BOD、またグリースの濃度にほとんど変化は見られませんでした。

 また、コロラド州のオーロラ市での調査では、ディスポーザーによる下水処理施設への負荷を最初に統計的意義のある見本として示しています。ディスポーザーを使用する人から排出した排水のBODおよび固形浮遊物の量はディスポーザーを使用しない人よりも30%高くなっており、排水の体積はディスポーザーを使用する場合のほうが2%大きいことがわかりました。

 さらに、通常のゴミ収集方法と下水施設を利用したゴミ処理コストを比較してみました。通常のゴミ処理では年間で一人当たり1.53ドルですが、下水処理を利用した場合は0.39ドルでした。(表1)

結び

 今回行なった調査では、地区全体の10~15%の家庭にディスポーザーを設置しても、下水濃度の変化を掲出することはほぼ不可能という結果がでました。ただし、合同下水道をもつ共同体がディスポーザーを使用する率が高くなれば、下水施設への影響は無視できなくなります。しかし下水施設を近代化し、ディスポーザーの設置数に合った下水施設を充実することで、ゴミ処理にかかるコストを全体的に激減させられるということとが、もっとも重要なポイントなのです。

表1

1964年のオーロラ市におけるゴミ処理費用
処理方法 年間一人当たり
通常収集※ $1.53
下水(ディスポーザー)を利用する方法 $0.39
下水(ディスポーザー)を利用すると年間一人当たり$ 1.14のコストダウンが実現しました。(1964年当時のコスト)

※米国では1964年当時、タバコが1 箱$0.25でした。

追加

 米国ではこのような研究が約半世紀に渡って積み重ねられ、多くの自治体がディスポーザーの設置を法律の一部である条例として制定しています。

 条例は州や市によってさま ざまですが、たとえば「新築物件にはディスポーザーを設置しなければならない」 「生ゴミを屋外に持ち歩いてはならない」などが制定され、これに違反すれば罰金や 禁固刑という厳しい罰則が待っています。これが、いまのアメリカのディスポーザー 実情です。