ディスポーザーの歴史
ディスポーザーの誕生
ディスポーザーの歴史は古く1927年、米国の建築家であり発明家のJohn Hammes(ジョン・ハムス)氏が、 『夫人のために生ごみ処理機を作った』のが始まりです。 ハムス氏は開発から10年後の1938年、ディスポーザーを世に出す為、ウィスコンシン州に《InSinkErator社》 を創業しました。1930・40年代はディスポーザーの排水を下水に受け入れることは、禁止または否定的でしたが、当時のInSinkErator社はディスポーザーが下水道や環境に影響を与えない事をテスト結果で科学的に示し、またディスポーザーをデモカーに積み込んでPRで各地を回り、ディスポーザーを認知させるべくロードに出ました。
John Hammes氏と当時のディスポーザー
その後、あらゆる企業・大学・研究機関の実験で下水道 (※1)に社会的安全が確認され、多くの企業がディスポーザー市場に参入するようになり、ディスポーザーは衛生面や利便性の良さから、他の家電同様に一般普及していきます。 1960年代頃になると、カリフォルニアなどの温暖な地域から伝染病であるポリオの感染を防止するために、屋外に生ゴミを出す事を禁止すると同時にディスポーザーの設置を義務付ける州が現れ始めました。 一般普及したディスポーザーは一時期は数十社以上もありましたが、1980年代にはM&Aが繰り返されながら淘汰され、現在は数社にとどまる程度になっており年間600万台以上が米国では販売され、その半数が買い替え交換需要になっています。
John Hammes氏と当時のディスポーザー
ヨーロッパの多くのメーカーは自社製造を辞め米国メーカーよりOEM供給を受けています。米国のほとんどの都市はディスポーザーを受け入れていましたが、ニューヨーク市は合流式で下水道の中でも最も古い一つだという事を理由に1997年まではディスポーザーに対し否定的でした。
しかし実態は、ディスポーザーの普及がニューヨーク市議員を取り込んだマフィアのゴミ回収利権に抵触していた為に反対派が多く存在し、マフィア撲滅を謳う当時のジュリアーニ市長は反対派の根拠を無くすため、ニューヨーク市において大規模なディスポーザー社会実験を行いました。古い下水道においても科学的根拠を基に、環境や下水道システムに影響が無い事を証明することによって、ディスポーザーの解禁に持ち込んだのです。
実態は、ディスポーザーの普及が議員を取り込んだマフィアのゴミ回収利権に抵触するため反対派が多く存在し、マフィア撲滅を謳う当時のジュリアーニ市長は反対派の根拠を無くすため、ニューヨーク市において大規模なディスポーザー社会実験を行いました。古い下水道においても科学的根拠を基に、環境や下水道システムに影響が無い事を証明することによって、ディスポーザーの解禁に持ち込みました。
(※1)日本の下水道は米国の下水道をモデルにしています
日本での普及
日本では1970年代に松下電器、シャープ、日立などがディスポーザーを製造し年間1万台程度が売れたと言われています。しかし当時の下水道処理施設は大都市の一部にしかなく普及率も20%以下でした。 下水道普及率の高い米国から来たディスポーザーは下水道未整備地域の開発計画にとっては、障害と見なされていました。 下水道未整備地域では日本の製造業者により自主的なディスポーザー導入自粛が開始され、旧建設省の下水道部も、全国の自治体にディスポーザーについて「自粛要請のお願いをすること」との指示を出しました。
しかし、下水道や合併処理浄化槽の汚水処理設備が普及した現在では、農水省が富山県魚津市(1997年)、国土交通省が北海道旧歌登町(2000年)で行ったディスポーザーの社会実験の調査結果報告により、農集落排水や下水道システムにおいて環境に影響が無い事が科学的根拠を以って日本でも立証されました。 今後は使用自粛を解除して《ディスポーザーを利用したおむつ処理への可能性》など、新たなる活用や環境対策にも試行しています。 独自の判断材料やデーターのない地方自治体には、半世紀以上前の「使用自粛のお願い」が残っている自治体も未だに存在する反面、下水や農集落排水、合併処理浄化槽が完備されている地域には、ディスポーザー設置に対する検討や補助金を出すといった、積極的な自治体も多く現れています。 ディスポーザー導入による財政コストの軽減や地域衛生予防、高齢化対策、犯罪防止(※3)、SDGs、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点から、今後は地方自治体主導によるディスポーザー地域一括設置が増加していく事が予想されます。
1996年から登場した「ディスポーザー排水処理システム」は、ディスポーザーに専用処理槽を組み合わせたシステム商品で多くの分譲マンションに採用されました。
当時は多くの企業が参入しましたがシステムの不採算性から近年はほとんどの企業が撤退を余儀なくされています。しかしディスポーザー自体の利便性からディスポーザー付マンションでの人気指数がIHや食洗機を抜いた事により一気に知名度を上げ、現在ではキッチンの必須人気商品になっています。
都市部に多くみられるディスポーザー付きマンションも登場から20年以上が経過しており、物心がついた頃からディスポ―ザーに馴染んだ世代が家庭を持つようになってきています。
現在はネガティブな時代を経てポジションをニュートラルから一般普及への移行期間であると言えるでしょう。
米国を含めた世界や日本の歴史においてディスポーザーの環境や利便性への実証・普及に携わったすべての企業団体や人に敬意を払います。
日本においては米国より60年以上遅れてこれからディスポーザーの歴史がはじまるのです。
(※3)ニューヨーク市で実践されたブロークンウインドウズ理論
街をきれいにする事による犯罪防止理論。東京ディズニーランドも同じ理論で敷地内へ捨てられたゴミは即時処理されています。